日本最北端、オホーツク海と日本海に挟まれた北の最果て、流氷流れ着く稚内にあるニュークラブフレンドで働く5人の女性は流氷の天使と親しまれ、欲望渦巻く夜の街を彩る夜の蝶、いや夜のクリオネである。
しかし、そんな夜のクリオネたちは過去に色んなやらかしを起こした問題児でもあったので、店長から「次に問題を起こしたら店をクビになるだけじゃなく、この業界にいられないようにする」と厳しく言いつけられていた。
ある日、開店前に呼び出された 5 人。店長は重い口を開く。
「お客様に癒しと夢の時間を提供するクラブフレンドは、大人の夢の国なんだ。君たちは某ねずみのキャラクターなんだ。お客様を楽しませる夢の国ならぬ夢のニュークラブ」
顔を見合わせながら、店長の言葉に頷く一同に店長が大声を張り上げる。
「それなのに、この夢の国、じゃなかった、夢のニュークラブのキャストの中に、思い切り、ゴリッゴリのワンナイト営業をかけたやつがいる！ これはクラブフレンドの禁止事項のはずだ！」
ワンナイト営業の証拠はあるが、犯人は誰かわからない。
フレンドグループの会長から、犯人が特定できない場合は連帯責任で全員クビにするように言われている店長は、絶対にワンナイト営業をかけた犯人を見つけ出すと息巻いている。
5 人はこの業界でしか働いたことがない。ここをクビになったらどう生きていけばいい？
冬の稚内で店から放り出されたら、凍死以外の道はない……！
ワンナイト営業をかけていたやつを見つけ出せ！
稚内で一番熱い話し合いが始まる。

国内某県。2025年。夏の盛りの夜明け前。
指定暴力団、五証組（ごしょうぐみ）組長邸宅。
その一室に、五人の構成員が集められていた。
日が昇れば、幹部の犬飼が新しく若頭に襲名する、式が執り行われるはずだった。
しかし先刻、犬飼は何者かに殺されてしまった。
殺害現場の別邸に部外者は立ち入れない。
組長が口を開く。
「お前たちの誰かが、犬飼を殺した事になるな」
五人の脳裏によぎったのは、二年前、先代幹部の猿川が何者かに殺された夜の記憶だった。
「身内の事は身内でカタ（決着）をつけろ。今から話し合って、犬飼殺しの責任を取って処刑される人間を決める」
冷たく組長が言い放つと、五人の目が怪しい光を帯びた。怯えは見られない。話し合いの結果次第では、のし上がる絶好のチャンスが訪れる。
「では、始めろ」
組長が話し合いの開始を告げる。

猿川が死んで得したのは、誰だったのか？
犬飼が死んで得するのは、誰なのか？
そして最後に全てを手に入れるのは一体、誰なのか？

今、そして過去に絡み合う因縁にカタをつける抗争が幕を開けた。